巻三 第五章
得業は、この稚児以外頼りとする子供もいないので、ただ嘆くばかりで、世間のことにも関わらないで、引き籠っていた。
それを利用して、この妻は、全て自分の思うに任せて、し得たりと、誰が父ともわからぬ自分の一人娘を、お姫様に仕立て上げて、寺内にいる悪党の鬼駿河来鑒という僧を婿にとって、「得業様が何かの時は、私の娘とともに、婿の来鑒に管理させましょう。」と内々に知らせた。
房内の者でも心ある者はなんという世の中だと、不安を募らせていた。
巻三 第五章
得業は、この稚児以外頼りとする子供もいないので、ただ嘆くばかりで、世間のことにも関わらないで、引き籠っていた。
それを利用して、この妻は、全て自分の思うに任せて、し得たりと、誰が父ともわからぬ自分の一人娘を、お姫様に仕立て上げて、寺内にいる悪党の鬼駿河来鑒という僧を婿にとって、「得業様が何かの時は、私の娘とともに、婿の来鑒に管理させましょう。」と内々に知らせた。
房内の者でも心ある者はなんという世の中だと、不安を募らせていた。