religionsloveの日記

室町物語です。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

花みつ④ー稚児物語3ー

上巻 その7 岡部は心中、「ここで言い出すよりは、とりあえずは帰って改めて手紙で申し上げてみよう。」と思ってお帰りになる。花みつ殿は、さすがに父が恋しく、妻戸の陰に寄り添うように立って、父が帰るのを見て涙を流しなさっていると、岡部も気づいて…

花みつ③ー稚児物語3ー

上巻 その5 別当を始め人々は、「かわいそうに、花みつ殿は母に先立たれて、いつの間にか父さえ心変わりして、疎(おろそか)かに扱うように見えなさるにつけても、先ずは月みつ殿をいとし子と思っているのだろう。」と思って待遇し(月みつの方を大切に扱…

花みつ②ー稚児物語3ー

上巻 その3 次第に日が暮れていくので、岡部と別当は互いに暇乞いして、岡部は花みつに向かって言った。「今日からおまえはここに預け置こうと思う。別当の御心に背くことなく、よく学問に励み、父の名誉ともなって、自身も徳を身に付けなさい。月みつもい…

花みつ①ー稚児物語3ー

「花みつ」は「室町物語大成」には、10巻に「花みつ」「花みつ月みつ」が、補遺2巻に「月みつ花みつ」が所収されています。あらすじはほぼ同じですが、表現には多くの違いがあります。このブログでは「花みつ」を基本として、「花みつ月みつ」(以下「花…

稚児今参り全編ー稚児物語2ー

「稚児今参り」は僧侶と稚児の恋愛を描いたものではありません。稚児と姫君との恋愛ですから厳密には、稚児物語ではないかもしれませんが、主人公が比叡山の稚児ですので取り上げてみました。 室町物語大成9巻に岩瀬文庫蔵の*奈良絵本が翻刻されています。…

稚児今参り⑧ー稚児物語2ー

下巻 その10 何日か過ごしていると、姫君の夢に、父大臣や奥方の御嘆きなさる様子ばかりが何度も何度も現れるので、「きっと私のことを心配して嘆いているのだわ。」と思いなさっているのを、乳母は傍で見て、かわいそうに思い、「どうにかして父上母上に…