religionsloveの日記

室町物語です。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

塵荊鈔(抄)⑦ー稚児物語4ー

第七 さて、霊魂となった玉若殿は、偕老同穴を深く語り合った花若殿、また鴛鴦の袂を重ね合うように睦んだ僧正、「芝蘭断金」といった深い契りを結んだ同宿朋友らを振り捨ててたった一人、黄泉中有の旅に赴いて、生死の長い闇の路にお迷いなさっているのは憐…

塵荊鈔(抄)⑥ー稚児物語4ー

第六 日数を経ていくと弥(いや)増しに心の月を掩っていき、胸につきまとうのは雲と霧で、心が晴れわたることはありません。玉若殿は、「むなしくはかない露のような我が身を、宿す草葉のような所に風が吹き添って露を飛ばすように死んでいくことは、嫌だと…

塵荊鈔(抄)⑤ー稚児物語4ー

第五 「あなたとても岩や木でできている身の上ではごさいますまい。心の底に秘めている恋心をお語りなさい。」 と僧正が責めておっしゃると、玉若殿はこれを聞いて、 「まことにおっしゃることは道理です。さほど遠くない昔の事でしょうか、俊恵法師といった…

塵荊鈔(抄)④ー稚児物語4ー

第四 また、ほどほど昔の頃か、嵯峨開山(嵯峨山大覚寺開祖恒寂上人?)がまだ若年で石侍者と申していた頃、仏法修行をして、諸国諸寺を遍参して、当山(比叡山)にお上りになりました。頃は二月半ばの事で、さる院家の庭の梢は、まるで大庚嶺の梅が風に匂い…

塵荊鈔(抄)③ー稚児物語4ー

第三 巻2から巻10までは花若・玉若の記述は多少の問答はあるようですが、ほとんど見えないようです。(精読したわけではありませんが。)ですから③は巻11冒頭から始めます。 早物語の盲僧が情感たっぷりに玉若・花若・師匠の情愛を語ったのでしょうか。…