religionsloveの日記

室町物語です。

2020-08-17から1日間の記事一覧

あしびき㉛ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第七章 今は奈良上人と呼ばれるようになった少将の君は、寂而上人の墓を離れることができず、依然としてたった一人高野の庵室にとどまって修行していたが、後々は霊験あるところどころを修行して歩き、やがて東山の麓の長楽寺の奥に庵を結んだ。済度衆…

あしびき㉚ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第六章 寂而上人(侍従)の大原の庵は、比叡山からさほど遠くなく、顔見知りの同朋らが仏法の不審な点などをしきりに尋ねに来て、念仏にも支障をきたすほどであった。大原の住まいは愛着もあり、良忍上人ゆかりの来迎院を離れるのには未練もあったが、…

あしびき㉙ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第五章 一方、少将律師は公の法会を何度も務めて、少僧都の地位を望んだが、下位の者に先を越され、学道に対しての意欲も衰え、隠遁したいとの気持ちが強まり、暇乞いをしようと春日大社を参拝した。 五重唯識を象徴する緑の簾には、二空真如の露が滴り…

あしびき㉘ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第四章 侍従は中陰の法事などを終えて山に帰り上った。そして父の残した遺言をしみじみとかみしめた。すると、世間を出て仏門に入いったのに、なおもはかない栄華を求めているおのれの生涯がひどくつまらないものに思われてきた。「『人としてこの世に…

あしびき㉗ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第三章 奈良にとどまった禅師は、東南院を訪ねた。僧都は年老いて病に沈んでいたが、跡目のことなどを遺言できる僧侶も俗人もいなかったが、「様々なところを巡り巡って戻っておいでになったか。返す返すもうれしいことよ。」と言って、準備して迎え入…

あしびき㉖ーリリジョンズラブ2ー

巻五 第二章 侍従は手負った者の傷を繕わせ、十四五日ほど奈良に逗留していたが、比叡山でも噂を聞き及んで、若僧・童子たちが数多く迎えに来たので、山へ帰らざるを得なくなった。 そこで、得業と二人きりで対面した。「長い間病に苦しんでおりまして、快癒…

あしびき㉔ーリリジョンズラブ2ー

巻四 第五章 五月上旬の頃だったので、五月闇で何も見えない。約束の刻限となったので、来鑒は黒皮縅の鎧兜に、目結いの鎧直垂を着て、三尺余りの太刀を佩いて現れて、召し抱えていた屈強の古強盗、二十余人とともに完全武装で天害の門に行った。約束してい…

あしびき㉓ーリリジョンズラブ2ー

巻四 第四章 少将の君がこの房で覚然に薫陶を受けていた時は、禅師の君と呼ばれていた。冠者たちにとっては覚然同様に主君なのである。冠者たちは来鑒の前では承知しましたと言って出てきたが、永承房に帰ると、「禅師殿といえば、我々には代々続く主君筋の…

あしびき㉒ーリリジョンズラブ2ー

巻四 三第章 来鑒鑒は自房へ帰ってすぐにところどころの悪党を呼び集めて、「今夜、いささかやらねばならぬことができてしまったのだが、助勢していただけないかな。」と言うと、みな承知して、丑の刻ほどに天害の門の辺りに集合しようと約束した。 その後、…

あしびき㉑ーリリジョンズラブ2ー

巻四 第二章 さて、得業の妻は若君が失踪して以来、大につけ小につけ、自分の思う通り誰憚ることもなく振る舞っていたが、回りまわって若君が帰ってきたと聞いて、ひどく狼狽した。聟の来鑒をこっそり呼んで、「得業殿の子は、落ち着かない方で、この五六年…

あしびき⑳ーリリジョンズラブ2ー

巻四 第一章 このようにしてニ三年が過ぎて、ある時少将が、「かりそめに奈良を出て、何年も音信不通になっている。父得業はどれほど嘆いているだろう。親不孝の非難は免れません。父の今の様子も聞きたいことです。私を連れて行ってくださいませんか。」と…