2024-01-01から1年間の記事一覧
「異郷譚」の四番目に取り上げるのは「富士の人穴草子」です。前半は異郷譚っぽいのですが、後半は地獄めぐりの様相です。地獄は異郷とはいえませんね。刊本写本も多く有名な話なので紹介するまでもないのかもしれませんが、お付き合いください。 原文は「室…
その5 その畜生道を過ぎて、大菩薩は餓鬼道を見せようということで新田を連れて行きなさいます。 ここにはまた、食物が前に据え置かれていても食べることができない者がいます。これは娑婆では財宝は持ってるのに、食事は他人にも施さず自分でも食べること…
その4 「新田よよく聞け。六道というのは地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道である。次に畜生道を見せよう。」と言って、先に進みなさると、蛇が三匹います。左右は女の蛇で真ん中に男の蛇を置いて巻き絡んで男が女の口を吸っています。その吹く息…
その3 その後大菩薩は、「ただ今頂いたの剣の恩返しに、あなたに六道の有様あらましを見せて帰そう。」と、毒蛇の形を十七八の童子に変身なさって仰しゃいます。「本当だろうか、日本の衆生は地獄が恐ろしいとはいうのだけれど、実際に行って帰ってきた者は…
その2 さて、和田胤長は頼家殿の御前に参って、岩屋のいきさつをこれこれと申し上げました。頼家殿はお聞ききになって、岩屋の奥の有様を見届けなかった事が、気がかりでならず、重ねておっしゃいます。「領主のいない所領が四百町ある。誰でもよい、所領を…