religionsloveの日記

室町物語です。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

稚児観音縁起③ー稚児物語1ー

その3 その時の上人の心中はなんともやりきれない。鳥は死ぬ時はその声はや柔らかになるといい、人は別離の時はその言葉は哀切であるという。そうでなくても遺言の言葉だと思えば悲しいのに、このように来し方行く末の事を心を込めて何度も何度も言うので、…

稚児観音縁起②ー稚児物語1ー

その2 十三四歳ほどの紫の小袖に白い練貫の衣を重ね着して朽葉染の袴をはいた少年が優美なたたずまいで立っていた。月の光に照らされたその容貌は実に美しく、竹の簪を挿して元結で束ねて後ろ髪を長く垂らし、漢竹の横笛をゾクッとするほど魅力的に吹き鳴ら…

稚児観音縁起①ー稚児物語1ー

「稚児観音縁起」「稚児今参り」「花みつ」は、稚児が登場する物語ですが、稚児と僧侶の恋愛譚ではありません。ですから「リリジョンズラブ」というサブタイトルを付けるのは憚られますが、広義には「稚児物語」でしょう。しかし稚児のありようは窺い知れる…