religionsloveの日記

室町物語です。

あしびき⑳ーリリジョンズラブ2ー

巻四 第一章

 このようにしてニ三年が過ぎて、ある時少将が、「かりそめに奈良を出て、何年も音信不通になっている。父得業はどれほど嘆いているだろう。親不孝の非難は免れません。父の今の様子も聞きたいことです。私を連れて行ってくださいませんか。」と誘うので侍従も、「あの折は、ありがたくも住山のことをお許しになったのに、思いがけず途絶してしまった。今このようになっているのをお知りになったら、私たちのことを、なんとも不義理な人でなしと思うだろう。すぐにでも同道して、ご説明申し上げよう。」ということで、小法師たちや大童子たちを少々、道中の用心のために武装させて、奈良へと下った。

 その日は光明山に泊まって、次に日に得業の房に行きつく予定であったが、あまりに長い間連絡を絶っていたので、何の前触れもなくいくのもさすがに憚られたので、東大寺の天害門の辺りにある、少将の君のめのと、覚然上座の宿所、永承房にひとまず落ち着いて、それからうかがう旨を得業のもとに言い送った。

 得業はちょうどその時外出していて、留守居が、「それではお帰りの際には、そう申しましょう。」と言うので、使いは帰って行った。

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参照 芦引絵

 

(注)光明山=京都山城にあった真言寺院があった山。

   天害門=手掻門・天蓋門とも。天平時代建立、鎌倉時代修繕。現存する。