2021-04-06から1日間の記事一覧
その7 「ああどうしたことだ。」と胸騒ぎして、急いで開いて見ると、「病気の人は日に日に弱っていき、昨日の暮れ方のこれこれの時分に亡くなりました。」と書いてあるのを読んで、目がくらみ、心は乱れて、「これはどういうことだ。」と夢の中にいるような…
その6 道行くと、富士に高嶺に降る雪も、積もる想いになぞらえられて、 消え難き富士の深雪にたぐへてもなほ長かれと思ふ命ぞ (なかなか消えない富士に積もる深雪に例えても、それよりさらに長くあれと思う あなたの命です。) などと胸から溢れ出でること…
その5 都では、藤の弁はに部と別れて以来、枕に残る民部の移り香をしきりに嗅いでは、その人に添い臥している心地になって、一日二日と起き上がりもせず、袂も涙で朽ちてしまうほど泣き悲しみなさるが、自分以外に誰もこのつらさを語り合う者もいなかった。…