religionsloveの日記

室町物語です。

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

秋夜長物語⑤ーリリジョンズラブー

第四章 翌朝、昨日の聖護院の御房を訪ねる。 房内を覗っていると、小ざっぱりした美しい童が、手水鉢の水を捨てに外に出てきた。桂海律師は、これは昨日の稚児の侍従の童子ではないかと思い、立ち寄って声をかける。 「少々お尋ね申し上げるが。」 童は驚く…

秋夜長物語④ーリリジョンズラブー

第三章 叡山から石山への道すがら三井寺を通る。 折しも春の雨。小止みなくしとしと降る雨には蓑傘も効かない。法衣も顔もぐっしょり濡れてしまう。 桂海律師せん方なく、しばしの雨宿りとて金堂の軒をを借りようと、聖護院の傍らを通る。塀越しに老桜が覗え…

秋夜長物語③ーリリジョンズラブー

第二章 桂海は、この夢はきっと所願成就の証であろうと喜んで、まだ東雲の明けやらぬうちにお山へと帰る。 「きっとあの夢が私を導いてくれる。」 そう思うと、今更なお奥山に移り棲んで専心しようとの心もすっかり失せて、ただ仏菩薩の御恩が降臨して、わが…

秋夜長物語②ーリリジョンズラブー

第一章 「これほど遁世発心を願い立ってもかなえられないのは、邪魔外道が我を妨げているからであろうか、それならば仏菩薩の加護によってこの願いを成就させよう。」 桂海は石山寺への参篭を思い立つ。観世音菩薩にすがって迷いを断とうと考えたのである。 …

秋夜長物語①ーリリジョンズラブー

序章 人はなぜ人を恋うてやまないのか。愛すれば愛するほど苦悩や艱難が待ち受けているのにどうして愛することをやめないのか。なにゆえに人は人を求めるのか。 我々は天地自然を愛する。理由などない。好きだから愛する。 春の花が樹頭に咲きほころぶ。その…