2020-11-02から1日間の記事一覧
序 その2 上野君円厳が二十一歳の時の四月八日であったと覚えている。半輪の月が西に傾き皆も寝静まったころである。短檠(たんけい)に灯をともして看経(かんきん)していると仄明るい灯火の向こうにゆらりと人影が現れた。 「どうした上野。」 そこには…
序 その2 上野君円厳が二十一歳の時の四月八日であったと覚えている。半輪の月が西に傾き皆も寝静まったころである。短檠(たんけい)に灯をともして看経(かんきん)していると仄明るい灯火の向こうにゆらりと人影が現れた。 「どうした上野。」 そこには…