religionsloveの日記

室町物語です。

2020-05-28から1日間の記事一覧

秋夜長物語⑱ーリリジョンズラブー

第十七章 かような折に、手を縛られた一人の老翁が牢に放り込まれた。異様な風体である。齢はとうに八十を超えているであろう。淡路の国で捕らえられたという。 翁はうろたえる様子も、嘆く素振りもない。 「わしは天空で酒を飲んでおったのじゃ。したら、雲…

秋夜長物語⑰ーリリジョンズラブー

第十六章 梅若は、外の世界がどうなっているかなどとは知る由もない。ただ石の牢に押し込められて明け暮れ泣き沈んでいるばかりである。 と、外が騒がしい。 大勢の山伏が集まって四方山話をしているようだ。 ある子天狗が言う。 「我らが楽しみは、人の不幸…

秋夜長物語⑯ーリリジョンズラブー

第十五章 三井寺が戒壇を立てた。 これを聞いて山門には緊張が走る。 叡山にしてみれば、三井寺は勝手に分裂して山を下りた子寺のようなものである。親寺の延暦寺にすでに戒壇があるのに、どうして重ねて戒壇が必要あるのか。 そもそも、戒壇は伝教大師が、…